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レントゲンカンファレンス症例・解答と解説



第35回 日本画像医学会 (2016年2月)

No.106症例6:15歳 男性

診断:Aneurysmal bone cyst
(arising from fibrous dysplasia)

【画像所見】
頭部単純X線
後頭骨に複数の嚢胞様骨透亮像を認める(図1)
CT
後頭骨の一部にはすりガラス濃度の骨肥厚が認められ,正常骨髄層が消失している。(図1矢印)
  • 琉球大学 UR-DBMS より
MRI
  • 後頭骨から頭蓋内に突出する腫瘤を認める.
  • 腫瘤は嚢胞様で辺縁に不整な被膜および充実成分を有し,腫瘤内部にも隔壁様の構造を認める(図2)。
  • 腫瘤内部信号は不均一で,出血性変化を示すT1WI高信号,T2WI低信号域を認める(図3)。
  • 腫瘤被膜(充実成分)は比較的厚く不整で著明な造影増強効果を示す(図4)
【病理組織所見】
  • 内皮細胞を欠く空隙に多量の血液がみとめられ,aneurysmal bone cystが示唆される(図6)。
  • 紡錘形細胞の増殖と膠原線維の増生を認め,骨梁の形成も認められる(図6)fibrous dysplasiaに合致する所見である。
解説:Aneurysmal bone cyst
(arising from fibrous dysplasia)
  • どの年齢層にも発症するが,特に20歳以下に多い.性差はない。
  • 大腿骨,脛骨,上腕骨など長管骨の骨幹端部や脊椎椎弓に好発するが,その他いずれの骨にも発生し,まれに軟部組織にも生じる。
  • 内腔に血液を貯留する多嚢胞性骨病変で,嚢胞壁は線維芽細胞,破骨細胞様多核巨細胞が出現し,多彩な所見を示す。
  • 約70%が一次性,約30%が二次性とされる.一次性の大部分は原因不明であるが,外傷に続発したものが知られている.二次性は他の原因となる腫瘍に随伴したもので,骨巨細胞腫,線維性骨異形成,軟骨芽細胞腫などの腫瘍が原因病変となる。
  • 急速に骨を破壊して増大する時期がある。
【画像所見】
単純X線およびCT
嚢腫成分を含む膨隆性病変として認められる。内部に液面形成を認めることもある。
MRI
膨隆性の境界明瞭な病変で,多房性血管腔とその壁・隔壁からなる。内部は血液であり,液面形成を伴うことが多い。充実成分の割合は多様であり,時間の経過とともに壁・隔壁が厚くなる傾向がある。二次性では原因となる腫瘍が随伴するため,原因疾患の特徴が認められる。
【画像上の鑑別診断】
海綿状血管腫,骨肉腫,転移性骨腫瘍,単純性骨嚢腫(内部出血を伴えば)など 。
【病理組織像】
血液を貯留する多数の嚢胞腔と線維性嚢胞壁をみる。嚢胞壁は被覆細胞を欠き,線維芽細胞の増生を主体とし散在する破骨細胞様多核巨細胞・反応性骨形成・ヘモジデリン沈着を伴う。二次性病変では,線維性骨異形成,骨芽細胞腫,軟骨芽細胞腫,巨細胞腫といった先行病変の組織所見を壁の一部に認める。悪性腫瘍,特に骨肉腫は動脈瘤様骨嚢腫様変化を生じやすいため鑑別に注意を要する。
【治療・予後】
治療は原則的には病巣掻爬と骨移植(自家骨、ハイドロキシアパタイトなどの人工骨)がなされる。いくらかの症例において自然に増殖が停止しほぼ治癒することが報告されている。また,生検にて小さな開窓を行った後や塞栓術後にも同様に治癒傾向を示すことがある。再発率は約20%で多くは2年以内に起こる。転移はなく,予後は良好である。しかし常に二次性の動脈瘤様骨嚢腫の存在を忘れてはならない。
放射線照射については副作用の面から厳密に制限されなければならない。
【参考文献】
  1. Malik R, Pandya VK, Awasthi P. Secondary Aneurysmal Bone Cyst Developing in Fibrous Dysplasia. Ind J Radiol Imag. 16:27-28,2006.
  2. Itshayek E, Spector S, Gomori M, Segal R. Fibrous dysplasia in combination with aneurysmal bone cyst of the occipital bone and the clivus: case report and review of the literature. Neurosurgery. 51:815-818,2002.
  3. Lin WC, Wu HT, Wei CJ, Chang CY. Aneurysmal bone cyst arising from fibrous dysplasia of the frontal bone (2004:2b). Eur Radiol. 14:930-932,2004.
  4. Terkawi AS, Al-Qahtani KH, Baksh E, Soualmi L, Mohamed Ael-B, Sabbagh AJ. Fibrous dysplasia and aneurysmal bone cyst of the skull base presenting with blindness: a report of a rare locally aggressive example. Head Neck Oncol. 11:3-15,2011
  5. Diercks RL, Sauter AJ, Mallens WM. Aneurysmal bone cyst in association with fibrous dysplasia. A case report. J Bone Joint Surg Br. 68:144-6,1986.
  6. 山口岳彦,福庭英治,大塚隆信.2動脈瘤様骨嚢腫,12骨腫瘍類似疾患.骨・軟部腫瘍―臨床・画像・病理.(診断と治療社) p146-147,2010.
  7. 小田義直,福田国彦,大塚隆信. 3線維性骨異形成,12骨腫瘍類似疾患. 骨・軟部腫瘍―臨床・画像・病理.(診断と治療社) p148-151,2010.
  8. 江原 茂,名嘉山哲雄.(1)動脈瘤様骨嚢腫,4腫瘍類似病変.エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI 第2版(三輪書店)p148-149,2010.