レントゲンカンファレンス症例・解答と解説
第36回 日本画像医学会 (2017年2月)
No.113症例3:40代 女性
- 【画像所見】
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- 皮下浮腫
- 傍声帯間隙や後咽頭間隙の浮腫
- 両側顎下腺腫脹(分葉構造が強調されてみえる)
- 全体的に両側対称性な病変
- 【病態のカテゴリー】
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などが考えられるが、経過から腫瘍は否定的。感染症としても経過が早すぎる印象。経過・両側対称性病変であることなどからアレルギーは比較的考えやすい病態だが、2回の検査間で新たな薬剤使用はない。
ただし、ヨード造影剤は数ヶ月ぶりに使用している。
所見は非特異的であるが、ヨード造影剤の稀な副作用として両側顎下腺腫脹が生じうる事が知られている。
臨床的にも他に疑わしい病態がなく、ヨード造影剤の副作用と考えステロイドで対応。症状悪化なく、自然軽快した。
経過・画像所見から、ヨード造影剤の副作用であるヨードムンプス ”iodide mumps”と考えられる。
診断:ヨードムンプス(ヨード造影剤の副作用)
- 【ヨードムンプスについて】
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- ヨード造影剤投与後の唾液腺腫脹で、稀な遅発性副作用のひとつ(数日後でも生じうる)
- 唾液腺の導管にヨードが過度に蓄積することによって、炎症が惹起されるのではないかと考えられている
- 唾液腺のヨード濃縮能に関連しており、腎機能障害は本疾患のリスクファクターと考えられているが、本例のように腎機能障害がなくても複数の発症報告あり
- 過去のヨード造影剤投与で問題がなくても、生じうる
- 致死的な呼吸器障害を来した報告はなく、2週間程度で自然軽快が期待され予後は比較的良好
- まとまった画像報告はみられないが、両側顎下腺腫脹として発症することが多い(耳下腺や甲状腺・涙腺も腫脹することがある)
- 両側顎下腺が対称性に腫脹し、分葉構造が目立つのは比較的特徴的といえるかもしれない
- 【結語】
- ヨード造影剤投与後遅発性に特徴的な両側顎下腺腫脹・頚部浮腫がみられた場合は、ヨードムンプスを考慮する
- 【参考文献】
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- Howard L.Berman and era Delaney. Iodide mumps due to low osmolarity contrast material. AJR 159:1099-1100, November 1992.
- R.S Moisey, S.Mcpherson, M. Wright, et al. Thyroiditis and iodide mumps following an angioplasty. Nephrol Dial Transplant 22: 1250-1252 2007.
- Gulian Zhang, Yaqi Li, Ru Zhang, et al. Acute submandibular swelling complicating arteriography with iodide contast. Medicine 94(22):e1389.
- M Federici, T.Guarna, M.Manzi, et al. Swelling of the submandibular glans after administration of low osmolarity contrast agent. Journal of Ultrasound 11, 85-88 2008.