レントゲンカンファレンス症例・解答と解説
第36回 日本画像医学会 (2017年2月)
No.120症例10:64歳 男性
- 【画像所見】
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- 下位頸椎~腰椎レベルで椎間板の石灰化と椎間板腔の減高を認める。
- Th12-L4の癒合椎を認める。
- Th11/12, L5/S1椎間板にガス像(vacuum phenomenon)を認める。
- 腰椎の生理的前弯は消失している。
- 【血液生化学データ】
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- 痛みに関しては対症療法で様子を見られたが、両下肢のしびれが出現したためTh8-L1の後方固定術が行われた。
- 術前の心機能評価で狭心症と大動脈弁狭窄症を指摘され、後日、冠動脈バイパス術および大動脈弁置換術が施行された。
- 術中、冠動脈の一部と大動脈弁に黒色変性が認められた。
- 【追加情報】
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- 脊椎の手術所見を確認すると、黄色靱帯にも黒色変性が認められていた。
- 問診にて幼少時から赤色尿を繰り返す既往があることが判明した。
- 両親はいとこ婚であった。
- 詳細な身体診察で、両側耳介軟骨に青黒い色素沈着が認められた。
尿中有機酸スクリーニングを施行
↓
診断:アルカプトン尿症
- 【アルカプトン尿症とは】
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- ホモゲンチジン酸(homogentisic acid, HGA)の代謝酵素(HGA-1,2-dioxygenase, HGD)の遺伝的欠損による先天性代謝異常症で、常染色体劣性遺伝を示す。日本では極めて稀。
- HGAやその代謝産物の蓄積や排泄による暗褐色尿や色素沈着(強膜、耳介)、関節症状を呈する。
- その他、腎結石・前立腺結石、心血管系への沈着による大動脈拡張や弁膜症が見られる。
- アルカプトン尿症性関節症:通常40代以降に発症する。椎体の他、仙腸関節、恥骨結合、膝関節、肩関節などの大関節が障害される。
- 【椎体病変の画像所見】
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- 椎間板の石灰化
- 椎間板腔の狭小化
- 椎間板の真腔現象(vacuum phenomenon)
- 椎間板辺縁の骨化による椎体の架橋、癒合
→強直性脊椎炎の”bamboo spine”に似る
- 亀背などの脊椎弯曲異常
- 病変は複数の椎間板に及ぶ
- 腰椎に好発し、頚椎には少ない
- 【鑑別疾患】
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- 変形性関節症:骨棘形成が目立つ
- 強直性脊椎炎、SAPHO(synovitis-acune-pustuosis-hyperostosis-osteitis)症候群:椎間板腔の狭小化に乏しい
- その他、椎間板の石灰化を来す疾患:
- CPPD結晶沈着症
- ヘモクロマトーシス
- 副甲状腺機能亢進症
- 先端巨大症
- アミロイドーシス
- ポリオ脊髄炎後
- 【結語】
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- アルカプトン尿症は稀な疾患であるが、レントゲンの所見が特徴的である。
- 変形、変性が乏しい椎体の複数のレベルにわたる椎間板腔の減高、椎間板の石灰化を認めた場合には、この疾患の可能性を考慮し、既往歴、臨床情報を確認する必要がある。
- 【参考文献】
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- Resnick D. Bone and joint imaging. second edition. WB Saunders, Philadelphia, p.444-448, 1996.
- 柳下章. エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI. 第3版. 三輪書店, 東京, P.412-413, 2015.
- Chanika P, et al. Natural history of alkaptonuria. New England journal of medicine 347.26: 2111-2121, 2002.