レントゲンカンファレンス症例・解答と解説
第39回 日本画像医学会 (2020年2月)
No.146症例6:60歳代 女性
- 【画像所見】
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胸部造影CT
右房と心房中隔に限局した壁肥厚を認める。同部位には不均一な造影効果を認める。
右冠動脈の一部は肥厚した壁内を走行しているが、明らかな狭窄は指摘できない。
血管造影では右冠動脈に狭窄は認めないが、多数の栄養血管の発達が描出されている。
腹部造影CT(平衡相)
両側腎盂に壁肥厚を認める。
- 【心筋生検 病理組織所見】
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CD68(+),CD1a(-),S-100(-),BRAF(-)
診断:Erdheim-Chester病
- 【追加画像検査】
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頭部CT・MRIにて、大脳鎌に沿った腫瘤を認め、左小脳橋角部にも腫瘤を認める。いずれもT1強調像で高信号、T2強調像で低信号を呈している。
CTの骨条件では、頭蓋骨に不均一な骨硬化像を認める。
頭部単純CT
頭部MRI
骨シンチグラフィー
CTで認められた骨硬化像の部位と一致して、頭蓋骨や大腿骨、脛骨、肘関節に左右対称性の集積を認める。
- 【Erdheim-Chester病】
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- 概念:
- 非Langerhans細胞性組織球症の一型で、異常増殖した脂質含有組織球が全身臓器に浸潤するまれな疾患。
- 頻度:
- 1930年に初めて報告され、現在までに650例程度の報告がある。
- 好発:
- 40-70歳代の男性にやや多い。
- 症状:
- 骨痛、尿崩症など。
- 病変分布:
- ほぼ全例に骨硬化性病変が見られ、特に下肢の長管骨に多発する骨硬化性病変が特徴。
- 約50%で骨外病変を有し、心臓、肺、腎臓、後腹膜腔、中枢神経、皮膚に多い。
- 画像所見:
- <心大血管病変>
- 右心房壁に濃染する腫瘤形成(33%)
- 大血管壁に沿った軟部影(coated aorta) (67%)
<後腹膜病変>
- 水腎症・尿管拡張(33%)
- Hairy kidney(68%)
<骨病変>
- 大腿骨遠位と脛骨近位に左右対称性の骨硬化
- 骨シンチグラフィーで強い集積
<中枢神経病変>
- 髄膜に沿った腫瘤形成(23%)
- 下垂体後葉のT1高信号が消失(47%)
- 眼窩への浸潤(25%)
- 鑑別診断:
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<肺野病変>
<心大血管病変>
<腎病変>
<中枢神経病変>
<肺野病変>
- 治療:
- インターフェロン
- BRAF遺伝子変異陽性例に対してBRAF阻害薬(ベムラフェニブ)が有効とされ、2017年にFDA承認された。
- 予後:
- 初発症状から診断確定まで平均4.2年と長く、5年生存率は41~68%と予後不良。
- 【結語】
- Erdheim-Chester病は診断までに時間がかかることが多い。各部位における特徴的所見を総合して考え、本症を疑うことで、早期診断に繋がると考える。
- 【参考文献】
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- Medicine (Baltimore) 1996; 75: 157-169
- Blood 2014 124:483-492
- Radiology 2017; 284:910–917