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レントゲンカンファレンス症例・解答と解説



第23回 日本画像医学会 (2004年2月)

No.28症例6:71歳男性

診断:“髄膜浸潤”を伴った
Wegener's granulomatosis

【画像所見】
画像所見としては鼻副鼻腔にびまん性軟部濃度肥厚が見られ,一部多結節様を示す.両側篩骨洞領域では軟部濃度腫瘤様に認められる.内部濃度は比較的均一で明らかな石灰化は認められない.後上部において鼻中隔穿孔を認め,右眼窩内側壁,篩骨篩板,鷄冠基部,蝶形骨平面,前頭洞後壁の浸食性,破壊性変化を伴う.右眼窩壁の浸食性変化は眼窩尖部レベルに及び,眼窩内側から下壁に沿った眼窩内円錐外腔を中心とした眼窩内浸潤性軟部濃度病変を認める.ただし,眼窩尖部レベルでは視神経周囲の脂肪層の混濁,消失を来しており,右視力低下に関連すると思われる.同様にして下眼窩裂の脂肪層も消失している.鼻副鼻腔に比較的広範な浸潤性軟部濃度肥厚を認め,鼻中隔を含む多部位における骨浸食性変化,眼窩への浸潤性変化などからWegener's granulomatosisが考慮される.さらに,図4及び5において広範な髄膜肥厚が疑われる.頭痛を訴えていることよりWegener's granulomatosisの髄膜浸潤と考えられる.その後施行された造影後T1強調像(図)においても広範な髄膜の肥厚と増強効果が確認された.本例ではcANCA(circulating antineurtrophil cytoplasmic antibodies)の上昇,鼻内生検病理像などから診断が得られた.その後,ステロイド投与により症状の軽減が見られている.浸潤性真菌性副鼻腔炎は鑑別疾患となるが,本例はとくに免疫不全を示す状態ではなかった.また,鼻腔円蓋部を中心に腫瘤様所見を認め,篩骨篩板の破壊が見られることから嗅神経芽腫も鑑別疾患として含まれると思われ,年令にも著しい矛盾はないが,病変が広範かつ多中心性で,骨浸食性変化も腫瘤様軟部濃度病変に隣接しない部位を含めた多部位にわたることなどから考えがたい.
  • 図6
  • 図7
【解説】
Wegener's granulomatosisは鼻副鼻腔及び肺の急性壊死性肉芽形成,多発性壊死性血管炎,巣状或いはびまん性糸球体腎炎などを示す比較的稀な病態であり,病因は不明である.診断においてcANCA上昇が重要である.中枢神経病変は稀で1.2-8%とされ,以下の3型に分けられる.
  1. 脳・脊髄の壊死性血管炎
  2. 鼻副鼻腔・眼窩病変の直接浸潤
  3. 髄膜,脳,頭蓋冠の壊死性肉芽.
本例では鼻副鼻腔病変を認め,篩骨篩板や前頭洞後壁破壊を示し,直接浸潤(上記2型)が疑われるが,髄膜所見が広範かつびまん性であることから髄膜における肉芽形成(上記3型)も伴っていると思われる.画像上は造影後T1強調像において広範な髄膜肥厚と増強効果を示す.
【参考文献】
  1. Tishler S, Williamson T, Mirra SS< Lichtman JB et al. AJNR Am J Neuroradiol 1993;14: 1248-152.
  2. Nusbaum AO, Morgello S, Atlas SW. Pial involvement in Wegener's granulomatosis shown on MRI. Neuroradiology 1999;:41: 847-849.
  3. Shiotani A, Mukobayashi C, Ohtata H et al. Wegener's granulomatosis with dural involvement as the initial clinical manifestation. Intern Med 1997;:36: 514-518.