レントゲンカンファレンス症例・解答と解説
第24回 日本画像医学会 (2005年2月)
No.37症例3:1ヶ月、男児
診断:I cyst を伴う胆道閉鎖症
Biliary atresia with type I cyst
- 【画像所見】
- 実際には超音波検査、CTの順で検査を行ったが、まず腹部造影CT(図2)の所見をとる。肝門部に薄壁の嚢胞性腫瘤が存在するのが認められ膵頭部へは開排するように進展している。総胆管の嚢胞状の拡張である。嚢胞内部には debris や結石もなく壁在結節もない。門脈左枝に沿って腹側に低吸収の帯状の構造が認められる。肝内胆管の拡張かも知れない。肝の内部には異常は指摘できない。胆嚢は内腔虚脱しているのか描出が不良である。膵、脾、腎など周囲に異常は指摘できない。結局、総胆管の拡張が唯一の異常所見のようである。
さて、この様なCT像を見たときに胆道閉鎖症(BA)ではなく先天性胆道拡張症(CBD)を考えたくならないだろうか。通常、臨床医がBAの可能性を強く疑う場合はCTが行われることは通常ない。初診時点でBAのCTを行うと言うことはあまりない機会である。胎児エコーで肝門部嚢胞性腫瘤ありCT施行、とオーダーされた場合、この様な画像にまず遭遇することになるがCBDと言ってしまう可能性は十分に考えられる。
腹部超音波(図1)を見ると両者の鑑別にもう少し迫れる。胆嚢は長径2cm以下と小さく、胆嚢壁も内腔虚脱しているにせよ不整な描出である。BAを示唆する所見である。門脈の腹側にはCTで低吸収な帯状構造が見え肝内胆管拡張の可能性も考えたが、超音波で見てみると管腔の拡大ではなくエコー輝度がやや高い門脈周囲域の拡大である。胆管周囲の線維化などを示す、いわゆるtriangular cord sign である。この症例がCBDではなくBAであることが示唆される。よって総胆管の拡張もCBDではなく総胆管閉塞型に伴うI cyst(type I cyst)であることが示唆される。
ここでQuestionで呈示しなかった胆道シンチグラフィ(図3)を開示して見てみると、肝自体へのRIの集積は強いが肝門部の嚢胞には全くRIが流れず、BAのパターンを呈している。BA with (type) I cyst の術前診断にいたり、術中胆道造影、手術でも確認された。
- 【解説】
- ご承知の様にBAは早期診断、早期手術が予後に重要な影響を及ぼす疾患である。白色便を示している胆汁うっ帯の患者を担当医が簡単に放すはずはないが、CTなどからBA with I cystとCBDを混同して診断過程を混乱させないようにしたい。
胆道閉鎖症(BA)は、新生児期から乳児期早期に原因不明の胆管の線維性閉塞を来し、ついには胆汁性肝硬変に至る疾患であり、閉塞部位によりⅠ型:総胆管閉塞型、Ⅱ型:肝管閉塞型、Ⅲ型:肝門部閉塞型に基本病型分類される。Ⅰ型の総胆管閉塞型には総胆管の嚢状の拡張を来すものがありI cyst (type I cyst)と呼ばれる。
BAの診断自体は胆道シンチグラフィ、術中胆道造影で行われる。超音波検査では胆管周囲の線維化が輝度の高い索状構造として直接観察できる。triangular cord signといわれる所見が有用である。門脈右枝の前で観察し、幅4mmを閾値としたとき感度80%、特異性98%程度の診断能を有すると報告されている(1)。
BA with I cystとCBDの鑑別は、
- 嚢胞の大きさはCBDの方がより大きい
- 肝内胆管の拡張はBA with I cystではほとんど見られないがCBDの方では通常認められる
- CBDでは胆嚢は正常サイズを保っているがBA with I cystでは低形成・痕跡的である率が高い(2)
- 胆道シンチでCBDには通常RIの流入が見られるがBA with I cystでは認められないこと
などの諸点に注目して行う。
図3
- 【参考文献】
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- Lee HJ, Lee SM, Park WH, Choi SO Objective criteria of triangular cord sign in biliary atresia on US scans. Radiology. 2003;229(2):395-400.
- WS Kim, IO Kim, KM Yeon, KW Park, JK Seo, and CJ Kim. Choledochal cyst with or without biliary atresia in neonates and young infants: US differentiation. Radiology 1998;209(2): 465-469.