レントゲンカンファレンス症例・解答と解説
第26回 日本画像医学会 (2007年2月)
No.47症例1:49歳,男性
診断:ベーチェット病
- 【所見】
- MRIのT2強調像にて,橋を中心に中脳から延髄にかけて高信号域が広がる(図1a~c,図2a・b).
造影T1強調像では,病変の一部に造影効果が認められる(図3a~c).
大脳および脊髄には明らかな異常所見は認めなかった(非呈示).
- 【解説】
- 本症例は,20歳頃より顔・背中などに皮疹がみられ,口内炎も認めていた.40歳頃より陰部に発疹や潰瘍を認めるようになった.さらに45歳時に難治性の右膝関節炎が出現し,臨床所見・経過からベーチェット病と診断される.49歳時にはぶどう膜炎を指摘された.
ベーチェット病は,再発性口腔内アフタ性潰瘍,結節紅斑様皮疹などの皮膚病変,ふどう膜炎を主とする眼症状,陰部潰瘍を四大主症状とする原因不明の血管炎である.
主病変は粘膜,皮膚,眼であるが心血管,中枢神経,呼吸器,消化器など全身にわたる.神経ベーチェットは,ベーチェット病発症後数年から10年の経過中に発症する遅発性病変で約10%にみられる.脳幹,基底核,小脳を好発部位として比較的急性に発症し,発熱・頭痛などの髄膜炎様症状を伴うことが多い.また静脈洞血栓症を来たし,これによる頭蓋内圧亢進症状や痙攣を来たすこともある.さらに末梢神経障害も少数例で認められる.
脳脊髄液中の細胞数(好中球および単核球)の増加,蛋白濃度の上昇がみられ,細胞数は活動性と相関すると言われる.
病理組織は炎症細胞浸潤を伴った血管の急性炎症で,毛細血管レベルから小静脈に強く見られる.炎症後は壊死巣となり,gliosisや二次性脱髄性変化も加わる.
MRIでは,急性期にはT2強調像で高信号域が脳幹,基底核,視床などに認められる.さらに大脳白質や脊髄などにも病変が出現することがある.
急性期を過ぎると高信号域は縮小し,脱髄やgliosisを呈し,慢性期には脳幹の萎縮を認めることがある.
MRI上の鑑別としては,多発性硬化症,サルコイドーシス,SLE,Sweet病などが挙げられる.特に多発性硬化症は,臨床症状や経過が類似し(多彩な神経症状が時間的・空間的多発する)鑑別が問題となるが,多発性硬化症では側脳室周囲や第4脳室周囲に病変が分布するのに対し,ベーチェット病では脳幹中央や皮質下白質に病変が分布する.