レントゲンカンファレンス症例・解答と解説
第28回 日本画像医学会 (2009年2月)
No.63症例5:40歳代、男性(同性愛者)
診断:梅毒に伴う精巣・精巣上体炎
- 【所見】
- 肝の発生異常には、分葉異常、嚢胞形成、あるいは肝内胆管閉鎖などがあり、分葉異常の中には、Riedel`s lobe, supradiaphragmatic lobe, accessory lobe, heterotopic liver tissue等が含まれる.Collanらは、主肝と離れて存在し連続性のないものを副肝 (accessory lobe)あるいは異所性肝 (ectopic liver)と呼び、茎によって明らかに連続するものを副葉 (accessory lobe)と呼んで区別しており、この臨床的な用語の使用が現在では一般的に用いられている.本例の場合、MRIおよびCTの所見は、肝実質と腫瘤とがほぼ同一であるが、超音波所見では腫瘤の周囲にやや境界不明瞭な厚い低エコー帯を伴っていることが、腫瘤が肝から発生し肝外性に発育した腫瘍を示唆するため、診断に苦慮する要因となった.カラードプラ所見は、腫瘤が肝より発生したものであることを裏付けるものであった.
- 【解説】
- 精巣炎(睾丸炎)は急性と慢性とに区分される.通常は片側性であり、両側性であることは稀である.急性精巣炎の大半はムンプス・ウイルスの感染によるもので、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの感染でも発症する.症状は患部の激痛と高熱および睾丸の腫脹である.慢性睾丸炎は、淋病、梅毒などの性感染症や結核の感染を原因とするものが多かったが、最近は少なくなってきている.症状は睾丸が腫脹や触診上の凹凸不整ができることがあるが、痛みはない.副睾丸炎は細菌感染が主たる原因であり、高頻度に尿道炎、膀胱炎、前立腺炎を併発する.急性と慢性に区分され、以前は淋菌性のものが多くみられたが、大腸菌やクラミジアの感染によるものが増えて来ている.悪感発熱を伴い、患部の腫脹と疼痛を主訴とするが、時に精巣へ炎症が波及する.慢性副睾丸炎の多くは急性副睾丸炎から移行するが、まれに結核菌や梅毒の感染で、最初から慢性の形で発症するものもある.痛みや発熱は伴わない.本例は、疼痛・発熱はなく、梅毒に伴う慢性の精巣・精巣上体炎である.