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レントゲンカンファレンス症例・解答と解説



第30回 日本画像医学会 (2011年2月)

No.72症例2:60歳代女性

診断:Isolated neck extensor myopathyによる首下がり症候群

【所見】
頸椎X-Pの側面像では、通常状態で頸椎は前屈し、屈曲位に近い状態を呈している。十分な後屈は不可能であった。骨に明らかな異常は見られない。頸部MRIのT1WI横断像では、頸部の筋肉に異常信号を認めない。STIR横断像・冠状断像で左僧帽筋、左右の頭板状筋・頭半棘筋・頸半棘筋・後頭直筋・左肩甲挙筋・頭最長筋などに異常高信号を認める。筋肉の萎縮は見られない。 針筋電図検査:後頸部筋群で、low amplitude, short durationのMUPが得られ、early recruitmentも認められ、筋原生変化と考えられた。 経過:入院後、10日程度の安静のみで頭部下垂は改善した。その後、MRI( STIR)上も、徐々に異常高信号の低下と範囲の縮小がみられた。1年2ヶ月後のMRI(STIR) わずかに両側の頭半棘筋に高信号が残存するのみである。
【針筋電図検査】
後頸部筋群で、low amplitude, short durationのMUPが得られ、early recruitmentも認められ、筋原生変化と考えられた。
【経過】
入院後、10日程度の安静のみで頭部下垂は改善した。その後、MRI( STIR)上も、徐々に異常高信号の低下と範囲の縮小がみられた。
【解説】
首下がりとは、頸部伸展筋群の筋力低下により正常な頭位を保つことができずに頸椎が後彎している状態を指す症候名である。1992年にSuarez and Kellyは、頸部伸展筋に比較的限局した筋力低下を示し、首の垂れ下がり(dropped head)をきたす非炎症性ミオパチーの4症例を報告し、dropped head syndromeと名付けた。その後、その原因疾患として多系統萎縮症、多発筋炎、重症筋無力症、筋ジストロフィー、各種ニューロパチー、運動ニューロン病、頸椎症、パーキンソン病、パーキンソン病治療薬のdopamine agonistsが発症因子となった症例などが報告されているが、Katzら(NEUROLOGY 46 April 1996)は、既知の神経筋疾患には属さない、頸部伸展筋に限局したミオパチーが存在するとしisolated neck extensor myopathy (以下INEM)という疾患概念を提唱した。KatzらによればINEMは、頸部伸展筋の強い筋力低下(時に肩甲帯、上肢近位筋の筋力低下を伴うこともある)、針筋電図での頸部傍脊柱筋の筋原性変化、MRI上の頸部傍脊柱筋群の萎縮と浮腫性変化、頸部傍脊柱筋生検上で炎症所見を欠如する非特異的筋原生変化を認め、3-5年にわたって非進行性の比較的良好な臨床経過を示す疾患とされている。発症年齢は、64-85歳であり、高齢者に見られる。多くは生検を施行しても炎症所見を認めないが(non-inflammatory INEM)、稀ながら筋炎を起こす症例(inflammatory INEM)が報告されている。INEMでは特徴的なMRI所見が認められ、治療(ステロイド、安静)により改善する可能性があるので、放射線科医が知っておくべき疾患である。MRIでは、脂肪抑制T2WIあるいはSTIRが有用である。