レントゲンカンファレンス症例・解答と解説

---

---

第31回 日本画像医学会 （2012年2月）

No.79症例3：61歳男性

診断：非結核性抗酸菌症による 敗血症性塞栓
（ Rapidly growing mycobacterium）

【画像所見】

CXR PA

• 定期受診時（2010.05.10）Baseline
• 初診時（2010.05.19）
• 初診5日後 （2010.05.24）
• （2010.06.11）背景肺に軽度の肺気腫＋間質性肺炎像
• （2010.07.18）縦隔リンパ節腫大

胸部CT

両肺に数少ないが多発結節（小葉との関係は判断困難）の出現、出現速度は速く、増大経過（LVFX抵抗性）

2010.05.27　抗生剤（ LVFX ）投与開始後　解熱なし

• 
• 
• 
• 

2010.06.2） 初診から5週後

増大したものの一部に空洞形成、左上区の最大のものの空洞内には同心円状・索状構造がみられる

• 
• 
• 

【鑑別診断】

○真菌症
－クリプトコッカス
－カンジダ
○抗酸菌症
－結核
－非結核性抗酸菌
○敗血症性塞栓
－細菌性
－真菌
－抗酸菌
○多発転移性腫瘍
○白血病/リンパ腫
○血管炎

【その後の経過】

• 抗菌薬（レボフロキサシン）内服開始も解熱なし
• 血漿β-D-グルカン値正常、アスペルギルス抗体検査陰性
• 数日後という短時間で血液培養から抗酸菌が検出された→Rapidly growing mycobacterium （RGM）による敗血症と診断（図6）（図7）（図8）
• 遺伝子検査で最終的に Mycobacterium massiliense が同定された
• 抗菌薬（主にアミカシン）で加療され、肺病変は縮小
• 来院から約12か月後に骨髄異形性症候群の白血化により死亡

• 図6
• 図7
• 図8

解説：Rapidly growing mycobacterium

【Rapidly growing mycobacteriumとは】

• 培地での発育が速い（7日以内）菌種の非結核性抗酸菌群
• 感染巣として肺(特に肺に基礎疾患のある患者)、全身(特に免疫不全患者での播腫)の他、皮膚・皮下組織、創部、角膜、リンパ節、人工デバイス、カテーテルなどが報告されている 抗酸菌の分類

• 

【RGMによる感染症】

• RGMの代表である M. abscessus は、M.avium complex 、M.kansasii の次に多い　肺非結核性抗酸菌症の原因菌とされる Am J Respir Crit Care Med. 1;175(7):744-5.2007
• 他の非結核性抗酸菌と違って、 RGM感染症はAIDS患者に多くはないとされており、肺への感染は Cystic fibrosis 患者に多いと報告されている Ebert DL, Infect Dis Clin North Am 16:221-34. 2002 Mycobacterium massiliense

• 

• 2003年に M.abscessus から遺伝子学的手法で分離された
  Adekambi, T., et al. J. Clin.Microbiol. 41:5699?5708, 2003
• クラリスロマイシンの感受性の違いなどが報告されているが、M.abscessusとほぼ似ている
  Won-Jung Koh, et al. Am J Respir Crit Care Med. 183:405-410, 2010

RGMによる敗血症

• 報告は2例で、いずれも血液培養・喀痰培養の両方から M.massiliense が検出された 14: 984
• 画像報告は1例のみで両肺びまん性線状影・網状影、両下葉優位の consolidation を認めたとされる Tortoli E, et al. Emerg Infect Dis 14: 984-985, 2008
  Kobashi Y, et al. Intern Med 50: 1069-1073, 2011

• 

---

---