レントゲンカンファレンス症例・解答と解説
第32回 日本画像医学会 (2013年2月)
No.88症例6:40歳代 女性
診断:Fibrous dysplasia + Intramuscular myxoma
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Mazabraud syndrome
- 【画像所見】
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図1 MRI T1WI
- 左大腿内側広筋内に境界明瞭な相対的低信号腫瘤を認める。また、両側大腿骨や恥骨内には相対的低信号域が広範囲に認められる。右大腿骨近位部の弯曲も目立つ。これらの骨は通常よりもやや太い。
図2 MRI 脂肪抑制T2WI
- 左大腿内側広筋内に著明な高信号をしめす境界明瞭な腫瘤を認める。周囲には浮腫と思われる高信号域も認められる。両側大腿骨や恥骨内には不均一な高信号域が広範囲に認められる。
図3 T2WI
- 左大腿内側広筋内に著明な高信号をしめす境界明瞭な腫瘤を認める。
図4 骨シンチグラム
- 左上肢、左肩甲骨、左肋骨、左腸骨、両側恥骨、両下肢に多発性の集積が認められる
図5 単純X線写真
- 右大腿骨近位部は屈曲し、いわゆるshepherd crook deformityを呈している。骨は全体的にやや太く、内部はスリガラス状である。
左上腕骨や橈骨も太く内部はスリガラス状である。中手骨は一部しか見えていないが、同様の所見がありそうである。
- 【所見のまとめ】
- 広範な多発骨病変は、内部のスリガラス状所見や骨の変形から、polyostotic fibrous dysplasiaと考えられる。
左大腿軟部腫瘤は一見すると嚢胞様であるが、myxoid tumorや血管腫の可能性もある。造影MRIは実施しておらず、本画像のみでの鑑別は難しいが、上記の多発骨病変と関連づけると、筋肉内粘液腫の可能性が最も疑わしい。
解説:Mazabraud syndrome
- monoostoticまたはpolyostotic fibrous dysplasia(以下FD)に単発または多発筋肉内粘液腫を伴う疾患をMazabraud syndrome(以下MS)と呼んでいる。
- 1926年にHenschenが初めて報告し、2011年までに80の報告例。
- 報告例80のうち26例はMcCune-Albright syndrome(以下MAS; polyostotic FD、カフェ・オ・レ斑、思春期早発)と関連があると報告されている。
- MS報告症例の70%は女性。
- MS報告例の約80%はpolyostotic FD
- MS報告例の約60%は多発筋肉内粘液腫。
- 筋肉内粘液腫はFDの近傍にできる傾向がある。
- 筋肉内粘液腫の周囲に浮腫を伴うことがある。
- 稀な疾患で遺伝性ははっきりしない。
- 染色体20q13.2にあるGNAS1のmutationが、MAS、polyostotic FD、monoostotic FDと関連すると言われており、さらに筋肉内粘液腫との関連も分かってきた。
- 症状は色々で、小児期にpolyostotic FDによる変形などの症状があり、後に粘液腫が見つかる場合や、成人になって有痛性の軟部腫瘤で発症し、その精査中に骨病変を発見される場合がある。
- 【参考文献】
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- Best cases from the AFIP: Atypical presentation of polyostotic fibrous dysplasia with myxoma (Mazabraud syndrome). Case DB, Chapman CN Jr, Freeman JK, Polga JP. Radiographics. 2010 May;30(3):827-32.
- Mazabraud syndrome associated with McCune-Albright syndrome. Kitagawa Y, Ishihara Y, Hayashi M, Kim Y, Fujii N, Ito H. J Orthop Sci. 2011 Jan;16(1):129-32.