【インタビュー】 陣崎雅弘理事長が語る「画像病理対比と学会活用の極意」(後編)

インタビュー企画第2弾として、日本画像医学会理事長 陣崎雅弘先生に「画像病理対比と学会活用の極意」ついてお話を伺いしました。前編の「日本画像医学会が掲げる臨床・画像・病理のトライアングル」と合わせてご覧ください。

事務局

第二回では、理事長の専門分野である「画像病理対比」の重要性と、学会を最大限に活用する方法について詳しくお伺いします。

陣崎理事長:

放射線診断を行う医師にとって、病理をある程度理解することは、診断精度を高める上で非常に重要です。

私自身の経験をお話ししますと、私は入局3年目に病理診断科をローテーションする機会がありました。その時の放射線科の教授が、胃の二重造影法を確立された熊倉賢二先生で、先生は画像から病理像を推測する「画像病理対比」の手法で研究を推進されてこられた方でした。実際に病理を学ぶことを熊倉先生やその門下生の方々から勧められローテーションしたのですが、その結果、画像診断の理解が深まり、自分自身の診断力が向上したと感じています。

私はその後、泌尿器領域で画像病理対比の研究を続け、多くの論文を執筆することができました。画像病理対比は、診療に役立つだけでなく、研究テーマとしても発展性があるため、若手の先生方にもぜひ関心を持って学んでいただきたいテーマです。

事務局:

当時は、皆が画像病理対比を学ぶという風潮だったのでしょうか。

陣崎理事長:

いいえ。当時はIVRが主流になりつつあり、「画像病理対比よりもIVRを学んだほうがよい」という意見もありました。ただ私は、まずは画像診断の基礎を固めることが重要だと考え、病理診断科で病理を学ぶことを選びました。結果的にそれが非常に良かったと思っています。

事務局:

今の時代でも、若手医師が病理を直接経験することは重要だとお考えですか。

陣崎理事長:

現在は教科書が非常に充実しており、当時のように病理をローテーションしなくても学べる環境はあります。もちろん、直接病理を経験すると、より深く理解することができるようになります。

直接経験した人にとっても、本やデジタル教材から学んだ人にとっても、知識を確認できる場として、この画像医学会は非常に有意義です。私たちも院内カンファレンスで画像病理対比の検討を定期的に行っていますが、本学会はそのための基礎知識を体系的に学べる場としても機能していると思います。

事務局:

臨床医との連携という面では、この三位一体の知識はどのように活かされますか。

陣崎理事長:

主治医との対話も非常に重要です。日々の症例カンファレンスは臨床医と放射線科医で行われることが多いと思います。治療方針を議論するためには、臨床医がどのように考えているかを理解していることは必須になります。画像医学会では、臨床の先生方の思考過程を聞くことができますので、日常診療での議論もよりかみ合う様になると思います。

また、放射線科医だけでなく、臨床医や病理医の先生方にとっても画像診断の可能性と限界を理解していただくことは非常に有益だと思います。

事務局:

最後に、画像医学会で知識を深めるための効果的な活用法についてアドバイスをお願いします。

陣崎理事長:

日常診療の現場では、疑問に思っていることを病理や臨床の専門家に直接聞くのは難しいことも多いですが、学会ではその場におられるので気軽に質問できます。 Q&Aの時間や休憩時間の会話を通じて、普段は聞きにくいことも学べるのが大きなメリットです。新しい知識を得たいという目的で参加される先生方が多いので、ぜひ恥ずかしがらずに積極的に質問してほしいですね。比較的コンパクトな会場なので、話しかけやすい雰囲気もあると思います。

事務局:

陣崎先生、本日は大変貴重なお話をお聞かせくださりありがとうございました。

編集後記

今回のインタビューでは、陣崎理事長より「画像病理対比」の重要性と、学会を通じて知識を深めるための具体的な活用法について伺いました。前編で語られた「臨床・画像・病理のトライアングル」と併せて、診断力を高め、臨床医・放射線科医・病理医が互いに理解を深めるための学びの場として、日本画像医学会の果たす役割が改めて浮き彫りになったのではないでしょうか。日本画像医学会への学会参加を通じて、若手からベテランまで幅広い先生方が、日常診療や研究に直結する学びを得るきっかけとなれば幸いです。

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