左頭頂葉深部白質の小病変の定位脳腫瘍生検でGBMの診断となったが、その他の病変も一元的に全てGBMと考え、治療が行われた。臨床経過もGBMの診断に特に矛盾しない経過を示した。
2016年の報告にて、GBMの患者のうち複数の造影効果を有する病変を認めた頻度は34%程度であり、これらの症例のうち多くがmultifocal GBMに相当すると考えられたとの記載がある[2]。本症例の場合、各造影病変の間がT2強調画像、FLAIR画像の異常信号で明らかに連続しているとは言えない部分があるため、multicentric GBMと診断した。ただし、GBMの腫瘍浸潤はT2強調画像やFLAIR画像の高信号域を超えて認められうることが知られているため、実際には一連の病変である可能性は十分にあると考えられた。
鑑別診断に挙げられた転移性脳腫瘍について、古い文献であるが、脳転移と診断された患者のうち15%程度は精査にて原発巣が不明であるとの報告があり[3]、18F-FDG-PETは原発巣の同定に有用であるとの報告がある[4]。画像診断機器の進歩により原発巣が発見される頻度は報告当時よりはやや上昇していると思われるが、体幹部に明らかな悪性腫瘍を発見できなかったからといって脳転移を鑑別診断から除外することは困難と思われる。
Retrospectiveに本症例の画像を見返して、gliomaの診断をより支持する画像所見としては
- CTで軽度高吸収である点
- 右側頭葉に、造影病変のサイズの割に広範に広がる軽度腫大を伴った淡いT2強調画像高信号病変を認めた点
- 右頭頂葉におけるリング状に造影される腫瘤性病変の集簇性の存在
などと考えた。